「桜島の噴火は、赴任の祝砲」 小山 茂

ここ鹿児島教会に赴任して、早いものでもう一月が経ちます。無我夢中で気が付いたら4月も終わりという気がします。福音ルーテル教会では最も南の鹿児島にあるのに、東京から1500kmも離れている気がしません。昨年のNHK大河ドラマの「篤姫」を見ていたので、薩摩を身近に感じているのでしょう。また私がこの町を好きになったからでしょう。この街は目の前に桜島がドンと聳え、路面電車が走り、西郷南州を大切にし、焼酎とラーメンが旨く、鰹ときびなごの刺身も旨いのです。農業、畜産、漁業、醸造業と、食べることについて、美味しいものがたくさんありかつ安いのです。二年後には九州新幹線が博多から新八代が完成して、すでに運行している新八代から鹿児島までとつながり全線開通します。

肝心な新米牧師の礼拝と説教はどうかと、皆さん心配されているのではないでしょうか。精一杯させていただきそれでも足りない所は、主にどうか補ってくださいと祈っています。今まで主日の礼拝、受苦日の礼拝、召天者記念礼拝、結婚式司式をさせてもらいました。私は隔週で鹿児島教会と阿久根教会(鹿児島から北北西に80km)で礼拝を守っています。両教会間はインターネットによる同時礼拝を行っています。スカイプというソフトを使って、牧師がいる教会からもうひとつの教会に音声と映像を送ります。そして私は聖餐式をそれぞれの教会で月に二度ずつ行います。阿久根まで自分の車を運転していきます。高速を使うと約 1時間半くらいで行けます。途中東シナ海の水平線が広々と見渡せる道を走ります。阿久根は駅前に漁港をもち、美味しい魚が手に入りそうです。先日は信徒さんがご自宅で栽培したジャガイモのお土産をもらいました。皆さん心の暖かい方たちばかりで、私も自然と心開かれて交われます。

受難週に9年ぶりに桜島が噴火をして、地元で呼ぶ「どか灰」が降りました。突然温泉のような焦げ臭い臭いがして、窓の外を見ると太陽が霞んで、車はライトを点灯し火山灰を巻き上げて走っていました。火山灰が私に悔い改めなさいと言われたのかなと思っていましたら、教会員の方が小山牧師赴任の祝砲ですよと言われました。この地方の天気予報では、桜島上空の風向きが必ず知らされ、それによって洗濯物が干せるかどうか判断します。また、火山灰を捨てるための袋が配られ、ゴミ収集場所の一角に火山灰のコーナーが設けられています。先日は花粉症対策のマスクとゴーグルと帽子を持っていたので、そのまま使えて助かりました。この地域の銭湯はほとんど温泉ですが、きっと桜島が近いための長所でしょう。

今教会のさまざまな記録や歴史を見ています。先日は賀来周一先生の教籍簿を見つけました。また、かつて武蔵野にいらした杉尾祐子姉が礼拝に出席され、懐かしくお話をしました。この教会の雰囲気が私に合っているようで、信徒さんの皆さまに助けてもらいながら、この地で福音宣教をさせてもらっています。こちらにお出掛けの折、ぜひ立ち寄ってください。幸いにこの牧師館はたいへん広く、憧れの書斎を初めて持てました。お出でいただくまでにラーメン屋と居酒屋、温泉を開拓しておきます。皆さまよりいただきました携帯聖餐用具を、有効に使わせていただいています。本当にありがとうございました。主にあって、武蔵野教会が豊かに祝福されますように、鹿児島より祈っています。

小山 茂牧師(鹿児島教会、阿久根教会牧師)

(むさしのだより2009年 5月号より)