「サンディエゴだより(3)」 大柴譲治

2004年8月19日

むさしの教会ならびに関係者の皆さま

主の平安。

残暑お見舞い申し上げます。

今年の夏、日本は酷暑だったと聞いています。皆さま、お変わりございませんでしょうか。

私の方もようやく、昨日18日(水)、VITAS Innovative Hospice Care, San Diegoにおける11週間に渡る臨床牧会訓練(CPE-レベルII)を無事終了することができ、ホッとしています。昨夕のCPE修了式とパーティーにははるばるClaremont(ロサンジェルスの東、サンディエゴからは車で2時間)からデール先生ご夫妻がご参加くださり、感激でした。今回の研修は様々な意味でたいへん充実したものになりましたが、多くの方々の暖かい支援を受けてこれを実現することができましたことを心から感謝しています。成長のほどは再会の時に皆さまに判断していただくこととして、今後はこれを日本の現実においてどう生かしてゆくかが課題となりましょう。帰国後早速、9/2(木)には APELT-JWでの講演会(東京教会)、そして9/19(日)にはむさしの教会修養会での報告会が予定されていますので、詳細はその時にお分ちできると思いますが、まずは無事サバイバルできたことに満足している表情を同封の写真から読み取っていただけるかと思います。

一枚目はCPEグループの写真です。後列右から二番目がスーパーバイザーのDr. John Gillman。前列私の右側がアシスタントのスーパーバイザーでスーパーバイザー候補訓練生Jess(カナダ人)で、二人ともローマ・カトリック教会の神父だった方です。後の5人は神学生で、後列左から二人Joselito(ホセリート、フィリピン人)とDanがカトリックの神学生。Joselitoは来年神父となります。後列真ん中のBonnieはUnited Church of Christの神学生、右端のTonyは英国人で聖公会の神学生、私の左隣KarenはNon-denominational の神学生です。カトリックの神学生二人は30代ですが、二人のスーパーバイザーと二人の女性は50代、Tonyは60代(引退ビジネスマン)ですので、グループでは私が三番目に若いメンバーということになります。国籍の上でも教派の上でも年齢的にも多様で多彩で、とてもよいメンバーに恵まれた10週間半の研修でした。

前にもご報告いたしましたが、一週間40時間のうち30時間が臨床研修の時間でpatientの訪問、10時間がCPEグループ研修の時間でした(毎週1時間、スーパーバイザーとの個別面談の時間がありますが、それを含んでいます)。トータルで52日間(独立記念日はお休みでした)、416時間の研修でした。これ以外に課題のペーパーワークがありますので、毎晩4時間前後はコンピューターに向かったでしょうか。英文は特に時間がかかります。3週間目に持参したコンピューターが壊れてパニックになりましたが、なんとかそれも乗り越えることができました。最初の四週間は英語でもずいぶん苦しみました。自分が手も足も出ないダルマさんになった気持ちでしたが、二ヶ月目からは「七転び八起きだ」と開き直り自分のペースをつかむことができたと思います。産みの苦しみでした。結果としてはグループのペアメンバーからもホスピスチームメンバーからもスーパーバイザーからも大変によい評価をいただき感謝しています。私にとっては三度目(米国では二度目)のCPEですが、これで米国CPE協会(ACPE)認定のレベルIIをクリアしたことになります。正式のスーパーバイザーとして認定を受けるまではまだまだ訓練が必要ですが(あと三ヶ月のユニットを最低でも2つ受け、そしてSupervisory CPEを取ってACPEに認定される必要があります)、秋からは東京のルーテル神学校で神学生のためのCPE訓練をアシストすることになると思います。

今回のCPEは、死に行く人々に対するケアという側面において、新しい体験をなし得たという点はもちろんのこと、私が今まで行ってきたことを再確認・再評価し、「よし、この道でよい」という再肯定・再確信を得ることができたという点においても大変時宜を得た有意義なものであったと思っています。 私が介護ホーム(Nursing Home)をカバーするチーム956という17人ほどのチームに配属されたことは前回も報告させていただきました。7つの介護ホームに居住する15人が私の担当の患者として与えられ、毎週一回のペースで訪問をしました。10週間でそのうち二人の方を見送りましたが、人生の最後の貴重な時間を共有させていただいたことは忘れられない出会いでもありました。私の担当した方の中には、私が研修を終えて日本に帰ることを伝えますと、涙を流して別れを惜しんでくださった方が何人もおられます。まことに「会者定離の現実」と言わなければなりません。しかし同時に、たった二ヶ月半でここまで相互に深い絆を形成できたということは、「離者定会の現実」を確認することができたとも言える貴重な体験でもありました。思えば、二ヶ月半前、6月の最初には誰一人として知る人のいないサンディエゴであり、右も左も分からない未知の街でしたが、今では縦横に走るフリーウェイを自由自在に用いて(100-120キロ)、カリフォルニアの青い空とさわやかな風と美しい景色を楽しみながら、どこにでも行くことができるようになりました。当地において、いくつもの忘れ難い出会いが与えられ、今ではSan Dieganの一人になった気持ちがしています。例えば、あるチャプレンとの出会いに導かれてサンディエゴ連邦刑務所におけるディスカッショングループにも二度ほど参加させていただきましたし、Old Globe Theatorでのシェイクスピア劇にも劇場ボランティアとして三度ほど参加し観劇することができました。ホーリネスの流れを引くサンディエゴ日本人教会にも三度ほど礼拝に出席し、明日はそこの大倉信牧師に昼食に招かれています。いくつかのルーテル教会の礼拝に出席させていただき、暖かいお交わりをいただきました。キャロル・サック夫人も訪問したことがあると語っておられた、美しいサンディエゴホスピスも見学することができました。市内のルーテル牧師会にも三度ほど参加させていただきましたし、一度はユダヤ教のシナゴーグでの礼拝にも参加することができました。また、マルチン・ブーバーの高弟として著名なユダヤ人哲学者モーリス・フリードマン博士とご一緒に食事する栄誉にも恵まれるなど、CPE以外の体験を含めて、私の当地でのQOL(Quality of Life生活の質)は実に高いものであったと思います。日本には森田療法という精神療法がありますが、誕生から現在までの成長の過程を再体験し、再確認する中で、心身ともにリフレッシュ、リセットされた思いがしています。「Georgeは与えられた三ヶ月のサバティカルを真に有意義に用いた」とスーパーバイザーのJohnもCPE最終評価書の中で書いてくれました。

このような機会が与えられたことを心より感謝し、9月よりの働きに備えて残りの日々を過ごしてゆきたいと思っています。

これまでのお祈りを感謝すると共に、皆さまとの再会を心より楽しみにしています。まだまだ残暑が続いていると思いますが、皆さまもくれぐれもお身体ご自愛くださいますように。サンディエゴより神さまの祝福をお祈りしています。

在主。

サンディエゴにて  大柴譲治

(インターネット版むさしのだよりへの特別寄稿)