三島由紀夫 『豊饒の海』
堤 毅一 春の海
ニ 奔馬
三 暁の寺
四 天人五衰
九月例会は参会者が少なかった。大作であり且つ仏教小説であった故か。あの「盾の会」の制服には馴染めなかった私は、久しぶりに重厚な又精密に構成された上に流麗な文章に巡り会えた感がある。(筆力の絶頂に達した作家 ドナルドキーン追悼談)一巻、二巻は単独でも読めるが三巻、四巻と通読してラストシーンに到って著者の美学を思い感銘を新たにした。
本多の学習院時代から老年迄の一生を通して関連した各巻の主人公の輪廻転生(何れも脇腹に三黒子がある)には必ずしもついて行けなかったが、侯爵の嫡子清顕の病死、元書生の息子勲の刑を免除された後単独で要人を刺し自決、コブラによるタイ王女ジンシャン姫の死、船舶信号所職員出身の養子透の服毒失明 そして最後に清顕の愛人聰子門跡の本多に対する清顕否認。凡て意外性の結末で終わっている。
結局昭和四十五年十一月二十五日の三島の自刃に迄連続しているのではないか?
以下読書会ノートからの抜粋
A 自己愛(ナルシシズム)と孤独。他者の存在に対する無関心。三島は自分自身が崩れて行くことを許せなかったのではないか?
B 四部作読破!すごくきらびやかな文体に日本文学魅力に引き込まれました。結論は…。
C 男というのは無我で理想と美の中で生きて行く男性に憧れるのであろうか。私個人は本多( 清顕の親友)の崩れていく世界で終えるところが好きな人間かな。だけれど目は上を向こう。
D 読書会のお蔭で素晴らしい純日本文学を読ませていただきまして感謝しております。もし私が十八歳の時に之を読んでいましたら随分影響されたと思いますがもう四十を過ぎたので二十歳で人生にピリオドは打てず大丈夫です。これからも日本文学を読みたいと思いました。
(2002年12月号)