NHKのドキュメンタリー番組の中で、ひとりの若者が取材されていました。京都の友禅染めの工房で学んでいるその人の作品が映し出され、図案の可愛らしさに私は感想の手紙を送りました。まもなくして「手紙をもらってうれしかった」という本人からの返事が来ました。続けて、私もまた返事を書きました。そしたら、今度はこんな文面が届いたのです。「仕事から疲れて帰ってきたら、ポストに手紙が入っていました。返事ってかえってくるんですね。嬉しくて楽しいから、また、今こうして書いています」
“返事ってかえってくるんですね”これは、私にとって生まれて初めて聞く台詞でした。何気なく出した返事を、こんなに素直に喜んでくれている。しばらくの間、私は考えました。そして思ったのです。この人との手紙のやりとりを、大切に続けていこうと──。
日々の祈りがちょっと義務的になったりあるいは忘れてしまっていたり。でも、私たちの祈りを毎日楽しみにしておられる方がいらっしゃるのです。心から祈っていきたい、そう思うのです。