街を離れ、山の高台からうっすらと霧におおわれた街をはるか遠くに見た時、まるで天上からこの世界を見ているようで、急に時間の流れが穏やかになった、そんな不思議な気がしました。
私が「おやすみなさい」と一日を終えて床に入るのと同じ時に、地球上のどこかで「おはよう!」と言って新しい朝を迎えている人がいる。私が「うーん、悔しいー」と怒るその時、地球上のどこかで「うわぁー、嬉しい~」と喜ぶ人がいる。そして今、私が息をしたこの瞬間に地球上のどこかで誰かが生れて、どこかで誰かが命を失っていっている。
いつも、自分のことや自分の目の前のことしか見えていないけれど、ちょっと周りを見渡すと、世界中の一人一人にそれぞれの時があり、それぞれの出来事がある。だけど、それでも、みんな同じリズムで息をしている。この世界に人を造られた時に神様が吹き入れてくださったその息を、今も私たちは続けていっているのです。
(96年11月)