イトスギ~ノアの箱船の用材 池宮 妙子

 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。次のようにしてそれを造りなさい。(創世記6章14節)

 ヒラムは使節を遣わして、こう言わせた。「御用件は確かに承りました。レバノン杉のみならず糸杉の木材についても、お望みどおりにいたしましょう。」(列王記上5章22節)

 荒れ野に杉やアカシヤを ミルトスやオリーブの木を植え 荒れ地に糸杉、樅、つげの木を共に茂らせる。(イザヤ書41章19節)

  イトスギの仲間は温帯~亜熱帯に12種あり、その中の一種セイヨウヒノキ別名ホソイトスギは、聖書の土地の山岳地帯に広く分布し、高さが20~30mの巨大な常緑針葉樹です。樹姿は狭円錐形かローソク形。直径2~3cmの松ボックリのような球根が、枝に下向きに着きます。

 材は堅く耐久性があり、古代には造船用、建築、神像を刻む材として使われていたと記されています。現在ヨーロッパでは庭園樹として用いられていますが日本では余り利用されません。

 聖書のイトスギは、正しい和名はホソイトスギ、ヒノキ科です。渡来は明治中期。日本でイトスギといわれる植物はスギ科、スギ属で、その仲間には有名な屋久杉や吉野、秋田、木曽杉などがあります。

ホソイトスギ Cupressus sempervirens(「常緑の」の意)L.