ネズミとは小さい哺乳類の総称でレビ記11章の清いものと汚れたものについての規定では、地面を這い回る小爬虫類と共にひとまとめにされています。中でもモグラネズミは地中に穴を掘って暮らし、草の根を食物としてモグラ同様、目が退化しています。時に農作物に被害をかけることがあります。
聖書にはイエネズミが登場していません。イエネズミには人家の天井裏に住むクマネズミと下水で生活するドブネズミがあります。クマネズミの原産地はインド・マレー地方の米作地帯で、日本にはお米と一緒に渡って来たようですが、西方には10世紀を過ぎた頃に広がっていったようです。一方のドブネズミは中央アジア原産でヨーロッパに広がっていったのは18世紀に入ってからです。従って、聖書の世界にはイエネズミはいなかったと考えられます。しかし、農作物に大きな被害を与えるハタネズミやノネズミ類はパレスチナにも沢山いたのです。
サムエル記上5章には神の箱がペリシテ人に奪われた。神様がペリシテ人に様々な災いを下したので、ペリシテ人はイスラエル人に神の箱を返す時に『大地を荒らすねずみの模型を造って』一緒に返したのです。これはハタネズミでしょう。この記述は数十年に一度は起こるハタネズミによる農作物の大被害を物語っていると言えます。
(99年10月号)