某日、水郷と近江商人で名高い滋賀県の近江八幡を訪れた。一柳米来留(ひとつやなぎ めれる)、“米国より来たりて留まる”の意味が込められた名を持つ人、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが生涯を通じ愛した地でもある。明治38年(1905年)に、熱い信仰を持ち高校の英語教師として来日した彼は、伝道活動と共に全国に1600を数える学校・図書館・病院などの建築設計を行った。後に、「事業を通して社会奉仕を」との理念を持つ近江兄弟社を設立。メンソレータム(現メンターム)を輸入・販売する。氏が残した自叙伝に、大学生時代、カナダのトロントで行われた学生伝道隊大会に参加した折りに経験した、講演者の姿を借りたキリストとの衝撃的な出会いのくだりが出ている。「信仰と事業の両立」を成しえた氏の、生涯にわたる活動の歯車が動き始めた瞬間だ。(や)