サンパウロだより・「B1」ってなに?

徳弘 浩隆


 突然ですがクイズです。「B1」ってなに?ヒントは「J3」。「ん?あれ?そうか!」と思いました?そうです。ブラジルへの信徒宣教師のことです。と、私が勝手に呼んでいるだけですが…。
「J3」は「Japan 3 years」の略でアメリカのルーテル教会から日本に来てくれる短期信徒宣教師のことです。むさしの教会では来日直後で日本語研修中のJ3信徒宣教師が暫くの間礼拝出席したり、二年間奉仕してくれた方もいたのでおなじみだと思います。主に、東京や熊本の教会や学校・施設で英語を教えながら宣教活動をし、青年伝道や学校の教育現場で良い働きをしてくれて、若者の伝道に一役かっています。本人にもとても大きな信仰的な経験になり、牧師も生まれています。
 「ブラジルでもそれができないか?」と思ったのです。昨年の一時帰国の折の全国でのブラジル宣教報告会で、若者に声をかけました。サンパウロ教会は、おかげさまでずいぶん安定してきました。教会の引っ越し、諸イベントや教室、改装工事をしてゲストハウスを提供し宣教や収益活動、その後、隣の南米教会の日本語メンバーが合同してきてくださり、メンバーも増えました。経済的にも日本の支援を頼らなくても自給できるのも目前です。
 次の課題は、青年伝道とポルトガル語礼拝の成長。そして後継牧師育成です。そこで若者伝道の切り札と思い祈ってきたのが、「J3」ならぬ「B1」なのです。「Brazil 1 year」のつもりで、「ブラジルで一年間日本語や日本文化を教えながら日系人の若者を集めて伝道し、牧師の手助けをしながらブラジル伝道に参加しよう」というものです。
 呼びかけに応えて、熊本の青年が手を上げてくれました。私が宣教室長の時に企画にかかわった、カンボジアやインドのワークキャンプに参加したこともあり、成田空港へ見送りに行って会ったことがあります。熊本の教会で若い牧師やJ3宣教師の導きを得て、室園教会で受洗し、教会学校や青年会で奉仕し、JELCの全国青年会の会長もしていた、山田麻衣さんという姉妹です。
 海外のワークキャンプで信仰の目が開かれ、成長させられ、機会があったらもっと長く奉仕に参加したいと思っていたそうです。学校で働いていましたが、その後保育士の資格も取れ、転職するタイミングにもなり、B1に挑戦してみるにはちょうど良い道が整えられ、相談した牧師や仲間、神様に背中を押されるような気持ちで、あれよあれよという間に、実現したということです。
 観光ビザでは最長半年、学生ビザですと1年から最長2年なので、1年の学生ビザでポルトガル語を学びながら教会で奉仕をするという形をとりました。当初は一部自己負担以外はサンパウロ教会で経費のすべてを出して呼びたいと思っていましたが、在日本ブラジル領事館が学生ビザの取得条件を厳しくしたので、学校経費が3倍以上に跳ね上がりました。そこでJELCやJELAに相談しましたら、JELAが全体経費の3分の1ほどを支援してくださることになりました。他は本人の自己負担と、サンパウロ教会が何とか予算化し、実現となったのです。
 私たち夫婦とサンパウロ教会の日系二世のご婦人・アリセさんがむさしの教会を訪ねてからちょうど一年。今はこの新しい奉仕者を得て、活気が満ちています。神様は祈りを聞いてくださり、必要な助け手を送ってくださったと、皆で感激しています。
 4月18日早朝に来伯。 21日はバザー。26日からはリオグランデドスル州という、ブラジル最南の州の3か所での日本語礼拝旅行に連れて行きました。サンパウロの隣の市のモジダスクルーゼス市の家庭集会にも一緒に行き、帰宅は深夜。各地で証しもしてくださり、皆に大歓迎されました。
 先週は楽器屋に妻と3人で行き、伝道予算でサックスを買いました。山田麻衣姉はテナーサックスが得意なので、ピアノが得意なブラジル人青年Luizと一緒に音楽礼拝をし、輪を広げようと思っているからです。楽器屋ではブラジル人の店員に「御嬢さんは何歳からサックスを吹いているんですか?」とか「お父さんもこれなら予算的にも安心でしょう」とかいわれ、もうすっかり親子・家族の気分で楽しくやっています。
5月5日の礼拝では、就任式と歓迎会をしました。さっそくサックスを披露してもらいました。午後のポルトガル語礼拝でも演奏してもらい、伝道のためにCDやDVDを作ろうと、盛り上がっています。IECLBにもニュースを流したら、HPでも取り上げられました。
 ポルトガル語も楽しく学んでいて、「まだ二週間なのに」と、皆を驚かせています。持ち味の積極性や、天性の明るさ、人懐っこさは、教会の宣教チームに活力と彩りを添えてくれ、みんなに「麻衣ちゃん」と呼ばれ、可愛がられています。
 毎月の恒例行事、交流シュラスコ会でも時折音楽ライブがあります。ボサノバや、若者のJ-Pop、おじさんバンドのビートルズなどがありましたが、今週末は麻衣ちゃんのJazzライブ。今後は、若者と日本語で話すお茶会や、日本語や音楽講座も始めます。小野リサが卒園した幼稚園の元園長先生が教会員ですから、その方にお願いして、幼稚園で日本語の絵本の読み聞かせボランティアもして宣教に繋がればと思っています。
 日本の教会は海外から宣教師が来て、J3が来てくれて当たり前と、受ける側ばかりでしたが、海外で宣教師だけではなくて信徒宣教師も働く場ができました。どうぞ、お祈りください。良い働きができて、良い実りが得られるように。そして、一年任期ですから、次はあなたが来て見ませんか?今までの信仰生活では得られなかった、大きな出会いや出来事に出会えるはずです。