「 第13回全国伝道セミナー~癒しを考え、癒された3日間」 市吉伸行

第13回全国伝道セミナー~癒しを考え、癒された三日間

市吉伸行

 

春の連休5月3日~5日の3日間、日本三景(今や世界文化遺産)宮島の国民宿舎で、第13回全国伝道セミナー(伝セミ)が2年振りに催された。西教区を中心に全国から約120名が集り、むさしの教会からも賀来牧師(基調講演)、徳弘牧師(スタッフ支援)、和田みどり姉、宇 五十鈴姉、市吉の5名が参加した。

今回のテーマは「いやし」。近年巷間で使われすぎの感もあるが、聖書に何十回も出現する言葉でもある。聖書では主に病いからの癒しの意味だが、現代は心の癒しを意味する事が多いというのが時代を反映している。今や万人が癒しを求めている! 今回の伝セミでは、サック夫妻によるメッセージとハープの調べ(初日晩)、賀来周一先生の主題講演とワークショップ(二日目昼間)、福音歌手・森 祐理さんによる賛美(二日目晩)により、参加者たち自身が癒され、また癒しについて洞察を与えられた。癒し人として派遣されるために。

賀来先生のお話は多岐に亘ったが、幾つか印象に残ったエピソードや言葉を紹介する。「(イエスの時代と違って)現代の教会で癒しが起きないのは何故か。現代の教会が健康志向すぎるからではないか」、19世紀にドイツで悪魔払いの癒しを行ったブルームハルト父子の話「病気になるのも神の御心、病気が癒されるのも神の御心」「(子ブルームハルトの教会に病の癒しを求めて訪ねた)ある者は癒された。ある者は癒されなかったが、生きる勇気を与えられた。」、やどかりの里という精神的病を持つ人たちのコミュニティーの話「病気は治っていないが、病気は人生の一部となっている」「兄弟姉妹として交わり、当たり前に接してくれるのが一番嬉しい」、終末期医療について「がん患者の“死ぬに死ねない”という問いに模範的な答えはない。しかし、そのような問い掛けをするというのは、相手が自分にとって大切な人であるということであり、“一緒に居てください”という叫びでもある。そのような時、看護師さんの存在自体がサクラメンタルである」。最後に、「教会には病人はいない。そこには人間がいる」。

森 祐理さんは神戸出身で、NHKの歌のお姉さんとして活躍された。ステージに現れた祐理さんの清楚な姿、高く澄んだ声で歌われる日本の名曲とゴスペルは聴衆の心をすぐに捉えた。語りも曲の味わいを深めてくれた。例えば、詩人野口雨情の2歳の子の死の慟哭の中で童謡「しゃぼん玉」の詩が生まれ、しかも、メロディーは賛美歌「主我を愛す」が元になったという。祐理さんは声が出なくなった時期があり、また、社会人として羽ばたこうとしていた弟を阪神淡路大震災の中で失っている。そのような方だからこそ、賛美の歌が、福音の語りが、逞しく美しい真実の力をもって聴衆の心を揺さぶったのだと思う。大の大人たちが涙を流し拭おうともせずひたすら聞き入っていた。癒しとは、傷は浅いと慰めることではなく、傷を負う自分を見つめ直し、傷を負いつつもなお生を断ち切られておらず、与えられた命を生かす新たな生き方ができることを発見させることではないか。そんな風に体で感じた。

◇次回の伝セミは2年後、2009年5月4日(月・祝)~6日(月・祝)の日程で開かれる予定です(実行委員長は知多教会・前田実兄、副委員長は岐阜教会・齋藤末理子姉という強力コンビ。むさしの教会とも縁があります)。今から予定に入れておきましょう。

(むさしのだより2007年7月号より)