『万葉集』(角川ビギナーズクラシック)
豊田静太郎「近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ」「田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」等々。
国語の時間に教わり、その意味を微かに体で感じるだけだった万葉の歌。坂口由美子さん著、ビギナーズ・クラッシク万葉集を解説本として読書会が開催された。
20巻、4500余首、1250~1400年の昔に、上は天皇から下は名もない庶民まで、多くの人によって作られ、まとめられたとか。歌集への動きは不明と示されているが、このような昔にこのような歌が作られ、まとめられていたことには大きな驚きを持たざるを得ない。後世の我々は慢心してはいけないが、このような日本文化を先祖が持っていたことは誇ってもよいのではなかろうか。テレビのどのチャンネルにも不精ヒゲに帽子の出演者がウロウロし、別の面では科学・技術の進歩が求められている現在に、万葉の歌を改めて読み直すこともよいことではなかろうか。
(2010年 9月号)