「読書会ノート」 ゲーテ 『ファウスト』

 ゲーテ 『ファウスト』

谷口 雅代

 

ゲーテは 世紀から流布されていた人形劇や民衆本「ファウスト伝説」に幼い時から親しみ、それを素材に彼自身の「ファウスト」を 年もの歳月をかけて完成した。民衆本のファウストは悪魔と契約し、その助けで地上の快楽を味わい、最後に魂を悪魔に奪われるが、ゲーテのファウストは、最高最深のものを求め、その無限の行動のゆえに浄化され悪魔メフィストフェレスによって魂を奪われる事なく、天使によって救済される。「善い人間はよしんば暗い衝動に動かされても正しい道を忘れていない。」

ファウストは悪魔に手引きされながら世界と人間の極限を求めて享楽へと、純粋な乙女グレートヘンの悲劇、皇帝へ仕えたり、ギリシャの美女ヘーレナとの結婚、死別、為政者としての成功等、並外れて拡大化された人間の可能性は、まさに多くの女性と恋愛し、あらゆる分野で活躍したゲーテそのものである。

読書会で翻訳どおり「努力するものは救われる。」ということが難解であったが、柴田翔氏が独語strebenを単なる努力するでなく、ゲーテ時代の「前方をめざす。」意味に解釈し、何か自分を全的に充たしてくれるものを人間はひたすら、求め続け、迷いつつも求める者を絶対者が救うと考えるとファウストの救済に通じるといっている。

(2001年11月号)