「読書会ノート」 『古事記』

  少年少女古典文学館 『古事記』(橋本治編)

廣幸 朝子

 

「日本は神の国だぞ」と突然総理大臣に言われて、「え?日本の国の神様って?」と思った人も多かったのではないだろうか。「天の岩戸」とか「稲葉の白兎」など断片的にしか知らなかったので、その実像に迫るべく「古事記」を読むことになった。

 

読んでみて、そのあまりにハチャメチャな展開にびっくり仰天。何という奇想天外、何という不道徳、そしてなんとおおらかな神々。我等がキリスト教の神は、ひたすら人間に興味があって我々の生き方に介在してくるが、日本の神々は自分達の日々の生活や、勢力争いに忙しくて、これっぽちも人間に関心がないということが大きな発見であった。(私達が読んだ上巻には人間は1人もでてこない。)しかし、人間界と神々の世界との違いはあれ多くのエピソードに、世界共通のテーマがあるのは人間の本質を考える上で興味のあることである。男は女を求めるものであり、その情熱が歴史を動かし、又兄弟が争いの源になることなど...。

 

読書会での感想は、教会員の人は、キリスト教の神との比較になり、そうでない人は、幼い頃聞いた話との再会を喜んだり、いまなお伝わる神社や祭礼のいわれに興味を持ち、また戦前に教育を受けた人は、教えられたことの再発見につながるなど、人それぞれの読み方があったが、共通の思いは、「草木で造った家に住み、菜食を主にし、温暖で緑多い土地」に生まれたこの神話の中に「日本人の、どこか淡泊で、お人好しで、いい加減な気質の原点」にふれたということであった。

 

それにしても、もし日本を神の国というのなら、もっと山や、森や、木や、水を大事にしなくてはいけないだろう。日本の神々はそのようなものの中に宿って居られるらしいから。

(2000年 9月号)