「読書会ノート」 デーケン、グロード、モレシャン

デーケン、グロード、モレシャン 『三人寄れば日本が見える』 旬報社

98年5月  豊田 静太郎

 

本年一月、吉祥寺YMCA主催によるデーケン先生の講演会があり、サイン会も催されました。そのとき購入した本書を一読して感心し、鈴木元子姉におすすめしたのがきっかけとなって、読書会に取り上げられた次第です。

永い年月、我が国において教育(デーケン先生)福祉(グロード神父)ファッション(モレシャンさん)の現場で働いておられる経験よりして、具体性がハッキリと屈折されている高齢者問題座談会の記事です。「エレガンス」「老いと死」そして「ユーモア」を強く意識しつつ発言した内容となっています。以前にどこかの会合において「フランスでは云々」の発言で反感を買ったと聞くモレシャンさんに対して同じような意見も出されましたが、間もなく霧消。読書会の識見の高さにも改めて感心させられました。記事の中で特に心に残ったもののいくつかを、つまみ食い式に紹介いたします。

(1)デス・エデュケイション(死への教育)はライフ・エデュケイション(生への教育)にほかならない。…最近はこのように理解されてきているようですが。

(2)高齢者自身の年令(暦によって決まる生活年齢と、健康に起因する生理年齢と、気持ちのもち方による心理年令とがあること)に対する自己理解が必要…誠にごもっとも。

(3)コミニュケイションの欠けている日本の家庭…向田邦子のテレビ場面…チャブ台を囲んだ夕食で、家族がその日のできごとを話し合っていた戦前の生活を思い出しました。

(4)よしやれにも努力が必要…毎日のように家人にガミガミ言われているところ。自戒すべき。

(5)神様は人間を泣かせるために創ったのではなく、幸福にするために創ったことを知る。…伝道の書にもこのような記述があったのではないかと、都合よく解釈。

(6)死を迎えようとする患者に対して、最後まで大切なのは何かを「する」ことよりもそばに「いる」ことである。……この点について橋本首相を見習うべき。盾を見極めている。