大平健 『やさしさの精神病理』 岩波新書
読書会感想ノートより『やさしさ』ってなあに?この言葉も世につれ人につれ変わっていくのであろうか。著者は精神科医として診た若者たちの症例をあげ、彼等のクールな『やさしさ』を指摘する。
この医者からホットな優しさを持つ世代といわれている読書会メンバーの読後感は、
A「自分自身の事を自力で解決できず・途方にくれて精神科医を訪ねる今の若者の『やさしさ』って何だろう。問題が多様化している現在、結論はでない」
B「『やさしさ』とは優しいという漢字では書けない『やさしさ』であると感じた。この『やさしさ』は時代の微かも知れない。このような時代に、どのように対処していけばよいのか。大きな課題を与えられたように思う。偏差値以外に別の物差しを提示できるかどうかが問われている」
C「『やさしさ』の本質は時代によって変わらないのではないか。人間同士話し合う努力を忘れてはならないのでは」
D「若い人々が妙なペット(冷血動物)やぬいぐるみを集める理由がよくわかった。(反熱血主義)」
E「今の若い人達が人間関係をスムーズにするために、お互いに傷つけ合わないという新しい『やさしさ』を持っているという事をこの本を読んでよく分かった。そして、慰め合うのは、彼等が相手の気持ちを敏感に理解できるからである。我々の世代も、ホットな優しさを押しつけない優しさが必要ではないか。また、子育ての時期、あまりに親が口を出しすぎ子供が心を鍛える時をなくしているのではないか、結果として、自分の弱い心をガードしてしまうのではないか」
F「小刀を持つ少年達や席を譲らない若者の話も出たが、目を転じるとつい半世紀前の日本では貧しい農村の子女が売られたり、小僧、女中の名のもとに多くの少年少女が酷使されていたし、韓国の人々をも蔑視する事が多かった。問題を抱えながらも、今の時代はハンデキャップを持つ人達のパラリンピックでの明るい顔に表れているように、個人一人一人が尊ばれようとしている。日本の社会はウォームな優しさという大きなうねりに乗って歩み始めているのではないだろうか」