編集後記 「天空飛翔」 秋田 淳子

かつて、こんな夢を見ました。

太陽が西の空に傾き始めて、その日が終わろうとしている穏やかな夕方のひとときのことです。赤く橙色に染まった空のなかを、私は両手をいっぱいに拡げて自由に飛んでいるのです。太陽が少しづつ山に沈んでいく動きや、家路に向かう人々が歩いている様子すべてが幸せでした。思うままに飛び続けている私は夢の中でも風の流れを体いっぱいに感じて、空を飛ぶことが自分をこんなにも楽しく包んでくれることを実感したのです。

それから何年かが過ぎた昨年、映画『タイタニック』を観ました。船の甲板で、主人公の女性が広大な海に向かって両手を拡げるシーンは、状況は異なるけれども夢の中で空を飛んでいた自分の感触と重なって涙が出てきました。

何の不安もなく恐れもなく、ただただやさしく穏やかな空気に包まれていたいのです。神様につつまれている感触を、もっと深く感じていたいのです。