「私は起きて、私の愛する方のために戸をあけました。私の手から没薬が、私の指から没薬の液が、かんぬきの取手の上にしたたりました。・・・その頬は良いかおりを放つ香料の花壇のよう。くちびるは没薬の液をしたたらせるゆりの花」(雅歌5章5, 13節)
「あなたは、最上の香料を取れ。液体の没薬五百シュケル、かおりの強い肉桂をその半分-二百五十シュケル-、におい菖蒲二百五十シュケル」(出エジプト記30章23節)
「そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。」(マタイ福音書2章11節)
香料原料として有名な没薬はカンラン科のコンミフォラ・ミルラという木から採取されます。アラビア、アビシニア、東部アフリカのソマリ海岸の原産で、低木で太い硬い枝を持ち、とげがあり、岩場、ことに石灰岩に生息します。
木材と樹皮には強い芳香があり、ゴム状の樹液が自然に幹や枝から分泌され、人為的には切れ目を入れ採取します。分泌した樹液は粘り気があり、白又は黄色味を帯びた茶色の油状ですが、枝から下の岩に滴りおちると固まります。香料、香水、薬用として使われ、死者の防腐保存に用いられました。
日本では生育しませんが、ハーブ店で、精油と樹脂が販売されています。