らば(騾馬) 石垣 通子

 らばで印象深いのは、ダビデの息子の一人のアブサロムの悲劇の死の物語です。らばに乗っていて彼の長い髪が木の枝に引っかかって、らばだけが走りすぎてしまったのです。「…彼はらばに乗っていたが、らばが樫の大木のからまりあった枝の下を通ったので、頭がその木にひっかかり、…乗っていたらばはそのまま走りすぎてしまった」(サムエル記下18・9)

 当時は王家の乗り物だったようです。また国王の戴冠式でも使われています。「…わが子ソロモンをわたしのらばに乗せ…」(列王記上1・33)

 それ以外では荷物の運搬という低いレベルの用途でも出て来ます。「…牛や羊の肉など多くの食糧を、ろばやらくだ、らばや牛に積んで運んで来た。」(歴代誌上12・41)

 そしてエリヤが活躍した飢饉の時でも、「…馬やらばを生かしておく草が見つかり、家畜を殺さずに済むかもしれない…」(列王記上18・5)と配慮されています。

 詩編32になると「分別のない馬やらばのようにふるまうな。それはくつわと手綱で動きを抑えねばならない。」となります。

 らば(騾馬)は雌馬と雄ろばの雑種。馬より小形で生殖力はなく一代限り。