4. 礼拝共同体 河野 通祐




むさしの教会を設計してくださった河野通祐兄が、月報むさしのだよりに6回に分けて書いてくださった貴重な記事を以下に掲載いたします。会堂建築に関心のある方は必見です。





 教会建築は教会がその働きのために必要な空間であり、環境であります。

 教会の働きとして最も重要なのは、主日ごとの礼拝であり、教会員はそれに参加することを信仰生活の原則としています。これは初代教会から今日まで、どのような地域においても、一貫して変わらない行為でありますから、この主日礼拝は教会成立の基本線であり、それを守ることによって教会の存在を確保し、生命を持続してきました(礼拝辞典より)。教会建築の規模はこの主日礼拝に参加する教会員の数とサクラメントと礼拝の形式を基礎にして創作するのが理にかなった方法と思います。

 むさしの教会は今の礼拝堂が出来るまでは近くにあったルーテル神学校(その頃は専門学校でした)のチャペルを借りて礼拝を守っていましたが、その頃の主日礼拝に出席した平均人数は50名余りでした。建築委員会はこの数を少なくとも100名にすることを目標にし、クリスマス礼拝など特別礼拝の時には150 名位の収容が出来る規模にすることをきめました。また、礼拝の形式については特別な意見もなく、神学校教会で行っていた形式をそのまま継承することでした。

 むさしの教会の建築にはいろいろな考えがこめられています。第一に地域のコミュニティー教会として親しみが持てるような木造建築の特徴を造形に表わそうとしたことです。それは何よりも高温多湿の風土の中で育まれてきた木造建築の特徴を踏まえて床を高くし、軒を深く出し、真壁作りにしたこと。通風と採光と外気との遮断を考えて、網とガラスによる無双窓を採用したこと。

 第二に教会建築の伝統を採り入れチャンセルの長さをネーブの長さの三分の一とし、聖餐卓の位置を青山先生のご指示に従って壁より前に出して設け、聖餐卓の背後から会衆に向かって司式が出来るようにしたこと。ネーブとチャンセルとを区別するレールを取り外したこと。将来の希望として、パイプオルガンを設置することを考え、木岡英三郎先生のお宅に伺っていろいろ助言をいただき、天井や壁、タワーの設計に反映させたこと。その他山本常一さんの制作によるいろいろなシンボルを用いたこと(青山先生が『むさしの教会とシンボル』でくわしく紹介されていますから、ぜひ読んでください)など。

 第三に教会建築の基本的な思想を保ちながらの経済設計として、建築費に大きな比重をしめる構造材の使用量を少なくすること、そのために市場の規格品で構成したこと、そして、その規格品を無駄を少なくした使い方をしたことです。さらに、最終の仕上げは何年もかかって徐々に行うことが出来るような未完成の完成という考えで壁は中塗りで仕上げ、床は一重張り仕上げとし、やねは安くて長もちのするものとして大波型の石綿スレート葺きとしました。また、屋根の単純化ということも経済設計の一要素でもありますが、それよりも、教会員の力で徐々に仕上げることに意義を見いだしていました。