サンパウロだより    徳弘 浩隆

1、日系ルーテル教会50周年「うらばなし」

目まぐるしい準備、賛美練習、各責任者の会議、招待状印刷に記念品袋詰め。まるで学園祭前夜(私は出たことがありませんが)のような日々が続きました。

「自分たちの50周年記念なのに、イベントの準備や接待ばかりで、『あれ?何かおかしいなぁ』と思うことがあるかもしれません。でも、内輪の少人数で集まってお祝いするためだけに、お金と時間を使わないことにしましょう。伝道集会にして、たくさんの方に日系ルーテル教会を知っていただきましょう」、そういい続けて皆をなだめて(?)、企画してみました。

すると、いろいろなアイデア、力が集められるものですね。皆も文句を言うのではなくて、新しい企画に驚き・楽しみながら取組んでくださいました。

教会員に、習字の先生、琴をしている方、ブラジル能楽保存会の方、手芸の先生、お花の先生がいらして、「出演」快諾。パソコン教室やシュラスコ会に出入りしてくださるボサノバのプロのブラジル人歌手、ギターを教えている歌手の先生、ブラジル留学中のギター奏者の仲間たちも。近隣ドイツ系ブラジルのルーテル教会の聖歌隊指揮者にMelo先生が声をかけると、ポルトガル語やドイツ語の賛美に、チェロやヴァイオリンも連れてきてくれます。

日本からは大柴先生が来られるということで、先生の専門を生かして「終活」をテーマに講演会も組み入れてみました。

簡単な通訳や翻訳はできますが、専門用語の通訳は歯が立ちません。そこで、先回の「むさしの便り」で登場したポルトガル語研修に出かけた時の先生夫妻に相談してみました。彼女の翻訳とご主人の校正で難しい用語もスムーズに。記念礼拝にはサンパウロに来て私とコンビで通訳や司会を手伝ってくれることに。

教会員は牧師とイベントディレクターに任じた代議員の姉妹を中心にして、その配下に司会、楽屋、ホール、台所、受付の各部署の責任者を配置。トランシーバーをつけて連絡が日ポ両語で飛び交います。その配下には他教会メンバーが配置されその指示でてきぱきと動くという段取りです。

考えてみれば教会員はほとんど裏方スタッフ。礼拝では半数以上が聖歌隊で壇上に上がります。つまり、お客さんが来てくれないと座席は空っぽということです。教会は手狭で同じ通りの徒歩1分の佐賀県人会ホールを借りました。テーブルとイスは200人ほど配置しました。

果たして何人来てくださるのか、日本からは?昔の教会員は?新来会者は? 空っぽならどうしよう?逆に新聞を見て沢山来られたら椅子や食事が足りない…と、不安も増します。予算も足りるだろうか?少し余裕があれば50周年記念事業で修理したい所が沢山あります。

祈りました。式典で習字の先生がみんなの前で「信仰・希望・愛」の3文字を大きな字で書くことにし、50周年の記念品の一つのキーホルダーにもそれがデザインされています。

キーホルダーには十字架もつけました。工芸品が趣味の教会員姉妹が作ってくれました。「そのこころ」は、「キーホルダーにはたくさんカギが下がっている。家や車や職場、自分のこの世の財産や大切なもの、自分の人生が現れている。しかし人生の本当のカギは十字架。そして、信仰と希望と愛。これがあればどんな難しいところでも、開けることができる」というメッセージです。それを見ながら祈りました。「神様がなんとかしてくださる。重たくあかないドアでも、こじ開けてくださる」と。準備期間中の礼拝でもそんな説教をして皆を励ましました。

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2、ふたをあければ神の愛

そして迎えた50周年記念礼拝。サンパウロの礼拝では300人を超す方が来てくださり、会場は満員でテーブルのない方も。「終活の講演会を聞きたくて来た」「良いお話が聞けた」「日本の文化からブラジルやドイツの音楽まで多文化の多様さが楽しめて感激した」という声がたくさん。「大盛況でびっくりした」「ブラジルのルーテル教会になくてはならない日系教会だと再認識させられた」と日系他教派やIECLBからの声もありました。忙しく走り回ってゆっくり食事もできなかった教会メンバーからも「やりがいがあり、楽しかった」という達成感の喜びの声が沢山。あとで「○○さんのお葬式も教会では手狭だから、この会場を借りて今回みたいにやってあげるから安心してね」と親子のような教会員が話してて皆で大笑い。
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 その後、訪伯団と一緒に、元サンパウロ教会や跡地を巡り、南米教会やDiadema集会所も訪問。JELAの支援先でもあったリオデジャネイロの教会施設や観光地の訪問、そして再度私も合流してリオグランデドスル州のIvoti、Itati、Porto Alegreの現地ルーテル教会やそこのメンバーの日本人グループと礼拝とFesta。Ivotiで25名、Itatiで45名、Porto Alegreでは200名(現地教会員含む)が集まりました。

 

3、キリストを頭にした一つの体として成長

「来年は皆で美味しいものをいただいてゆっくりお祝いしましょうね」と、今年の大騒ぎが終わって言いました。食事もあまり口に入らなかった人が多かったからです。でも、皆さん達成感と感謝で溢れていました。牧師とイベントディレクターをTopにおいてのイベントでしたが、その上にはキリストがいらして一つの体として成長させていただいたと実感します。

 さて、もっと教会も成長して次の時代を目指さねばなりません。もうひと頑張り。一番元気だった小笠原さんからも皆元気と希望をいただきました。今回、日系三世の洗礼式があったのも希望でした。みなさま、かみさま、よろしくお願いします。ありがとうございました。

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左:リオの十字架 右上:イグアスの滝にて 右下:小笠原さん、坂を上る